内分泌の疾患

甲状腺疾患

甲状腺疾患は、内分泌疾患の中でも特に高頻度で発生する疾患です。主な疾患としては「甲状腺機能亢進症」「甲状腺機能低下症」「亜急性甲状腺炎」「甲状腺腫瘍」が挙げられます。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺機能亢進症は「バセドウ病」とも呼ばれます。これは自己抗体(TSH受容体抗体)が出現して甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを過剰分泌させる疾患です。男女比としては1:4で女性の発症率が高く、頻脈や体重減少、手指の震え、発汗過多、イライラを感じやすいといった症状が見られます。甲状腺は全体的に腫れることが多く、眼球が飛び出したり、まぶたが腫れたり、物が二重に見えたりする「甲状腺眼症」を合併するケースも少なくありません。

原因

主な原因として考えられているのは自己免疫疾患です。甲状腺ホルモンの分泌を促す物質と酷似した「TSHレセプター抗体」が甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを過剰に生み出す状態になり、疾患へと繫がります。

診断

採血による評価で診断を下すことが一般的です。甲状腺刺激ホルモン(THS)の量が低下し、甲状腺ホルモンの量が増えている場合に、甲状腺機能亢進症と診断します。それに加えて、補助的に「TRAb」「TSAb」といった抗体の有無を確認し、抗体が認められる場合は甲状腺機能亢進症と考えられます。
この他に、必要に応じて超音波検査、心電図、胸部レントゲン検査などを行う場合もあります。

甲状腺機能亢進症の治療法

薬物療法、アイソトープ治療、手術などがあります。副作用やメリットがそれぞれ異なりますので、丁寧に診断・ご説明を行ったうえで、各患者様の症状や体質に合わせて、より適した治療法をご提案します。

甲状腺機能低下症(橋本病)

甲状腺機能低下症は「橋本病」とも呼ばれます。甲状腺の自己免疫異常が原因で甲状腺組織が破壊される病気ですが、発病のシステムは不明です。組織の破壊が進むにつれて、甲状腺機能が低下します。
一般人口における頻度は約18%であり、まれな疾患とはいえません。男女比は1:10~1:20と女性比率が圧倒的に高く、加齢とともに増加することが特徴です。
甲状腺が全体的に腫れるケースもあれば、ほとんど腫れないケースもあります。主な症状は、疲れやすさや気力の低下、むくみ、悪寒、体重増加、動作緩漫、傾眠、記憶力低下、のどの枯れ、便秘など様々です。
出現する症状が多いため、他の疾患が紛れている場合があり、誤診がないように鑑別診断をする必要があります。橋本病により甲状腺機能が低下した場合は、甲状腺ホルモンを補充する治療を用いることが一般的です。その後も甲状腺機能が変動しやすいため、経過観察を行います。

下垂体疾患

下垂体疾患とは、下垂体と呼ばれる小さな内分泌器官に生じる疾患です。下垂体から分泌されるホルモンが多すぎたり、少なくなったりすることにより不具合が生じます。主な疾患は先端巨大症、プロラクチノーマ、下垂体機能低下症、成長ホルモン分泌不全症の4つです。

先端巨大症

先端巨大症とは、下垂体前葉から成長ホルモン(GH)が過剰に分泌される疾患です。特有の顔貌や体型、代謝異常などの症状を伴います。また、手足の容積が増大したり、巨大舌の症状が現れたりするほか、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群を合併するケースも見られます。

原因

下垂体腫瘍が過剰に成長ホルモンを分泌させることが原因のほとんどです。まれに、成長ホルモンの分泌を促すGH放出ホルモンの過剰分泌が原因になるケースがありますが、これは膵臓や気管支に腫瘍がある場合の特例的な症状といえます。

診断

血液検査で診断を下すことが一般的です。成長ホルモンやインスリン様成長因子の血中濃度を調べ、基準値を上回るか確認します。さらに、MRIやCTの画像診断装置で下垂体の検査を行い、下垂体腫瘍の大きさや広がりを調べます。

先端巨大症の治療法

先端巨大症の大半が下垂体に発生した腫瘍により引き起こされるため、手術による切除を第一に検討します。手術療法が不可能な場合や、手術療法で感知を見込めない場合に検討するのは薬物療法です。成長ホルモンの産生を抑える薬剤を用いてホルモンの分泌量をコントロールします。手術療法薬物療法がいずれも困難な場合、放射線療法を検討します。

副甲状腺疾患

副甲状腺疾患とは、副甲状腺のホルモンに関連する疾患です。分泌量が多すぎる場合は副甲状腺機能亢進症、少なすぎる場合は副甲状腺機能低下症と呼ばれます。

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺の腫瘍や過形成、そして遺伝的要素が原因で、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰分泌される疾患です。2,000人に1人の確率で発症するとされており、男女比は1:3で女性に多い傾向にあります。
発症すると高カルシウム血症になりますが、軽度の場合は自覚症状がほぼ認められません。一方で高度の場合、疲労感や脱力感に見舞われやすくなるほか、頻尿や悪心といった症状も出現します。悪性腫瘍が原因の場合は特に高度の高カルシウム血症になりやすいため、入院治療が必要です。

原因

原発性副甲状腺機能亢進症の場合、原因として考えられるのは副甲状腺の腫瘍や過形成です。8割以上は良性の腺腫であり、全部で4つある甲状腺のうちの1つが腫大します。

診断

副甲状腺機能亢進症の診断には血液検査を用います。血液中のカルシウム濃度と副甲状腺ホルモンの値が高く、なおかつ尿中カルシウム排出量が多い場合は、副甲状腺機能亢進症と診断します。

副甲状腺機能亢進症の治療法

腫大した副甲状腺を摘除する手術療法を用いて治療することが一般的です。通常は1つの腺だけに異常が発生するため、この箇所のみを摘出します。近年は医学が進歩しており、以前と比較して体への負担が少なく、傷跡が目立たない手術が可能です。

副甲状腺機能低下症

副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺で作られる副甲状腺ホルモンが欠乏した状態です。副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム量を調整する役割を担い、不足するとカルシウムが減ります。結果として、こむら返りを起こしたり、手指をつったり、しびれたような感覚を覚えたりします。重症例では、けいれんを起こすケースも珍しくありません。

原因

副甲状腺機能低下症の原因として多いのは、頸部の手術や放射線治療による影響です。がんに関連する手術に伴って副甲状腺を摘出したり、放射線により機能が阻害されたりすると発症します。遺伝子異常が原因で発症するケースもありますが、これはまれです。

診断

血液検査により診断を下すことが一般的です。血液中のカルシウムと副甲状腺ホルモンの量を調べて正常値と比較し、副甲状腺機能低下症と診断します。

副甲状腺機能低下症の治療法

副甲状腺機能低下症の根治療法はありません。そのため活性型ビタミンD3剤やカルシウム剤を用いた薬物療法により、血液中のカルシウム濃度を増やす治療が有効です。手足の筋肉が硬直したり、痙攣を起こしたりする場合は、心電図のモニタリングも実施します。状況によりカルシウム製剤を注射し、血中のカルシウム濃度を調整します。

副腎疾患

副腎疾患は主に副腎皮質ホルモンが低下する副腎皮質機能低下症と、副腎ホルモンが過剰産生される原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫に分けられます。副腎皮質機能低下症は、倦怠感や脱力感、食欲不振、体重減少、低血圧、無気力などの諸症状を引き起こします。

原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症とは、副腎皮質から分泌されるアルドステロンが過剰に分泌される疾患です。高血圧症患者のうち5%~15%が罹患するとされています。原因は腺腫、過形成、癌といった副腎腫瘍です。高血圧やアルドステロンの作用により、心血管合併症を引き起こすリスクが高くなります。

原因

原発性アルドステロン症の原因は「副腎の腫瘍」と「過形成」の2つです。腫瘍が原因となる場合、多くは片側の副腎にできる良性の腫瘍です。一方の過形成とは、副腎の細胞が通常よりも増加する病態を表し、通常は左右両側の副腎に起こります。

診断

血液検査により診断を下すことが一般的です。原発性アルドステロン症には高血圧以外の自覚症状がなく、詳しい検査をしなければ、病気が発覚することもありません。血液検査ではARR(アルドステロンレニン値)を調べ、ARRが200以上を計測した場合は疾患が疑われます。

原発性アルドステロン症の治療法

原発性アルドステロン症の治療法は「薬物療法」「手術」「ラジオ波焼灼術」のいずれかです。まずはアルドステロンの作用を弱める薬を服用して経過観察を行い、改善が見られない場合は、手術を検討します。

性腺疾患

性腺疾患とは、性腺ホルモンの分泌異常により生じる疾患の総称です。性腺ホルモンやそれに関連するホルモンは、脳の視床下部や下垂体、副腎、性腺(精巣、卵巣)から分泌され、通常は分泌量がコントロールされます。男性は精巣からテストステロン、女性は卵巣からエストロゲンやプロゲステロンが分泌されますが、この分泌量が変動して疾患につながります。

性腺機能低下症

性腺機能低下症とは、精巣や卵巣といった性腺が機能不全を起こした状態です。原因としては、精巣や卵巣自体の異常や、脳の視床下部や下垂体の異常のうちいずれかが挙げられます。
性腺機能低下症に陥ると、男性は性欲の低下や勃起障害、女性は無月経となる場合が多いです。その結果、男女ともに不妊の原因となることにも注意しなければなりません。また、身体的精神的な症状が見られる場合もあります。

原因

性腺機能低下症は、性腺(精巣や卵巣)の異常が原因になる場合と、脳の視床下部や下垂体の異常が原因になる場合の2パターンがあります。

診断

性腺機能低下症を発症すると、特徴的な性機能症状が現れるため、これを基に疾患を疑います。身体検査で体の状態を確認した上で、血液検査により性ホルモン量を確認して診断します。

性腺機能低下症の治療法

治療法として有効なのは、男女ともにホルモン補充療法です。また、将来の妊娠出産を希望するかどうかも治療方針を左右します。挙児希望がなければ、二次性徴の発現や症状の軽減、合併症予防を目的として、カウフマン療法などを行います。
ホルモン補充などの治療は主に泌尿器科や産婦人科で行われます。性腺疾患が疑われた場合は、適宜ご紹介致します。

内分泌疾患の専門医が在籍しています

当クリニックには内分泌疾患の専門医が在籍しており、専門的で高度な治療が可能です。女性にとっては特にデリケートな疾患ですが、女性医師も在籍しているため、安心してご相談ください。心当たりの症状がある方は、できるだけ早く診断を受け、治療を開始することをおすすめします。

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